大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡地方裁判所 昭和51年(わ)103号 判決

国籍

韓国(慶尚北道永川郡新寧面花城洞三九九番地)

住居

静岡県磐田市中泉二九一四番地の二九

パチンコ遊技場経営

澤井昭孝こと

李鐘粛

一九二〇年六月一六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官飯田良和出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一〇、〇〇〇、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは金二〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は 磐田市中泉西町六一三番地磐田西町グランドホール、浜松市元浜町九二番地の二浜松元浜グランドホール、静岡県浜名郡雄踏町宇布見雄踏宇布見グランドホール及び同県榛原郡相良町波津六二五番地の一相良グランドホールなどに店舗を有し、パチンコ遊技場を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、帳簿等を備えつけず、売上金の一部をもって架空名義の預金を設定し、あるいは土地取得に際しての圧縮代金の支払及び架空名義での株式・債権の取得資金にあてるなどの不正な方法により、その所得の一部を秘匿したうえ

第一  昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額が三六、九〇〇、六二〇円であり、これに対する所得税額が一八、一六九、一〇〇円であるにもかかわらず、昭和四八年三月一四日磐田市中泉一一二番地の四所在の所轄磐田税務署において、同税務署長に対し、所得金額は五、八〇〇、〇〇〇円であり、これに対する所所税額は一、〇六八、八〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって被告人の右正規の所得税額と右申告税額との差額一七、一〇〇、三〇〇円の所得税を免れ

第二  昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額が三六、一二七、二一二円であり、これに対する所得税額が一七、七二二、五〇〇円であるにもかかわらず、昭和四九年三月一五日、前記磐田税務署において、同税務署長に対し、所得金額は六、六〇〇、〇〇〇円であり、これに対する所得税額は一、四〇〇、〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって被告人の右正規の所得税額と右申告税額との差額一六、三二二、五〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷の供述

一  被告人の検察官に対する昭和五一年二月二五日付、同月二六日付、同年三月三日付各供述調書

判事冒頭の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和四九年六月一二日付、同月二一日付各質問てん末書

判示第一及び第二の各事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する同月一三日付、同年八月二八日付、同年一一月八日付、昭和五〇年三月八日付各質問てん末書

一  証人黄乙順、同牧李司、同脇田英明、同宮城喜好、同黄乙伊、同中根真治、同稲垣信夫、同山下卓志の当公判廷の各供述

一  澤井美江こと黄乙順の検察官に対する供述調書

一  名古屋国税局収官吏大蔵事務官中根真治(七通、同年三月一〇日付中検察官証拠請求番号甲413を除く以外のもの)、同稲垣信夫(三五通、前同日付中検察官証拠請求番号甲391を除く以外のもの全部)、同伊藤克彦(一二通)、同村沢昭之(一通)各作成の各調査報告書

一  名古屋国税局収税官吏大蔵事務官山下卓志作成の脱税額計算書説明資料

判示第一の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する同年一月二七日付、同年二月一九日付各質問てん末書

一  磐田税務署長石川敏夫作成の証明書(証拠請求番号甲461)

一  前記中根真治作成の同年三月一〇日付調査報告書(証拠請求番号甲413)

一  前記山下卓志作成の昭和四七年分脱税額計算書

判示第二の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する同年一月二八日付質問てん末書

一  前記石川敏夫作成の証明書(証拠請求番号甲462)

一  前記稲垣信夫作成の同年三月一〇日付調査報告書(証拠請求番号甲391)

一  前記山下卓志作成の昭和四八年分脱税額計算書

(法令の適用)

被告人の判示各所為は各所得税法二三八条(昭和五六年法律第五四号による改正前のもの)に該当するので、いずれも所定刑の懲役及び罰金を併科することとするが、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条を適用して犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、罰金刑については同法四八条二項に従い各所定罰金限度額を合算した金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一〇、〇〇〇、〇〇〇円に処し、同法一八条一項により被告人において右罰金を完納することができないときは金二〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、なお情状を考慮し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間左懲役刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文に則り全部被告人に負担させる。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 千葉庸子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例